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私の、嘘偽りない言葉。眞冬くんを大切に思う気持ち。それをそのまま伝えたら……夏実さんは、小さく微笑んだ。
「……そっか」
ふわりと、春のそよ風が吹いて……夏実さんのポニーテールが、緩やかに揺れる。
「ありがとう。北原さん」
夏実さんはそう言って、再び前を向いた。
「眞冬、あんな感じだから、幼馴染の私以外、親しい人ができなくて。……ほんとは、悪い奴じゃないのに」
私達に背を向けながら、夏実さんは静かに語る。
その声色は、少し悲しそうだった。
「北原さんは気づいてくれてるみたいだけど、眞冬にも、色々あってさ。詳しいことは、私の口からは言えないけど……、昔のことが原因で捻くれちゃってるだけなの。本当の眞冬は、すごく気配りができるいい奴なんだ。だから……」
夏実さんは、ゆっくりと私を振り返りながら、困り顔で微笑む。
「友達になってあげて。北原さんなら、きっと眞冬を笑顔にできる」
そう言う夏実さんの表情は、どこか寂しそうだった。
その表情をみて、ふと思ったんだ。
もし、私と眞冬くんが友達になったら、夏実さんはどうするんだろうって。
今まで、誰よりも眞冬くんの傍にいた夏実さんは……一人になっちゃう?
そんなの、嫌だな。私、誰も独りにしたくない。
眞冬くんだけじゃなくて、夏実さんにも、笑顔でいて欲しい!
「夏実さん!」
私は夏実さんに駆け寄って、その手を握った。
「夏実さんも、友達になろ!」
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