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夏実さんについて行って、やがて辿り着いたのは、住宅街の大通りから外れた場所にある日本家屋だった。
玄関の入り口には「神崎」って書かれた表札が掛かってる。
「ここ、眞冬くんのお家?」
私が尋ねると、夏実さんが頷く。
「うん。……昔のね」
昔の……?
眞冬くん、今は別の所に住んでるのかな?
でも、何で?
分からないことが沢山浮かんできてしまい、私は思わず腕を組んで首を傾げた。
夏実さんは、そんな私を見て、困り眉で苦笑いした後、玄関のドアは開けずに、塀に囲まれた家の庭を歩き出した。私も、慌ててそれに続く。
眞冬くんの家、外観は大きくて立派なのに、庭には人が生活している感じが全くしない。家の壁に沿って並べられている鉢植えには、枯れた植物が植えっぱなしになってる。
まるで、誰も住んでいないみたい……。
夏実さんも言ってたけど、眞冬くんも、今はここには住んでないみたいだし、眞冬くんの家族も別の所で暮らしてるのかな。きっと、家族でお引越ししたんだろうな。
でも……、じゃあ、眞冬くんは何で昔の家に来てるのかな?もう、会う人もいないのに。
夏実さんの後に続いて、ぐるっと家の裏手に向かう。
庭に植えられた桜の木。その木陰に、彼はいた。
眞冬くんは、白と茶色と黒の三毛猫を膝の上に抱えながら、私達を睨んでいたんだ。
「何しに来たんだよ」
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