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不機嫌そうな眞冬くんに対して、夏実さんは溜息をつく。
「眞冬が急にいなくなったって聞いたから、探しに来たの。北原さんと、志野くんも、あんたのこと心配してた」
「別に、心配してくれなんて頼んでねえよ。そいつらも、どうせ俺のことが嫌いなんだ。善人ぶってここまで来たみたいだけど……ありがた迷惑なんだよ」
「眞冬……!」
「全員、帰れよ。授業始まるだろ」
「なら、あんたも学校戻りなさいよ!ここで1人で居ても、あんたが抱えてることは何も解決しないんだよ!?」
「っ……、うるさいっ!!」
眞冬くんの怒鳴り声で、彼の膝に居た猫が、びっくりして逃げ出した。
眞冬くんは、それを目で追うこともなく、ただ、苦しそうに歪んだ表情を私達に向けている。
その、あまりにも辛そうな顔を見て……私の胸が締め付けられた。
「帰れよ……!今すぐ、帰れ!!」
眞冬くんは、大きな声で怒鳴る。
それは、誰がどう聞いても、鋭い拒絶の言葉だった。
でも……私には、眞冬くんが助けを求めてるように聞こえたんだ。
もし、ここで私達が諦めてしまったら、眞冬くん、独りのままだ。
そんなの、嫌!
私は覚悟を決めて、両手を胸の前でぎゅっと握りながら、一歩、眞冬くんのもとへと歩み寄った。
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