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 桜が散り終え、出会いの季節が終わった天ヶ原町(わたしのまち)。  淡い紅色だった駅前の並木道も、もうすっかり緑色。  私は、お父さんと一緒に、天ヶ原駅の入り口脇にあるベンチで、爽やかな色になった桜の木々を見ていた。 「もうすっかり葉桜だな」  お父さんが、並木道を見つめながら、しみじみと呟く。 「今年は、レイラにも桜の花を見せられるかと思ったんだが……間に合わなかったのが残念だ」  そう言って、少し残念そうに苦笑いするお父さん。  私も、小さい頃は桜が散るのが寂しかった。でも、「桜が散るのは、来年も私達に幸せを届けるためだ」って、おばあちゃんが教えてくれたから、もう大丈夫。  来年の幸せのために、桜は花びらを散らせるんだ。だから、桜の花が終わっちゃうのは悪い事じゃないんだよね。  お父さんにも、このことを教えてあげなきゃ!
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