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* * *  西公園の桜の大木。今、丁度満開で、薄紅色の花々がフワフワと揺れている。私はその木の下まで千秋くんを連れてくると、千秋くんの両手を握ったまま、クルクルと回った。 「見て見て!」  回る私達を中心に、薄紅色の花吹雪が巻き起こる。キラキラと輝く桜の渦が、私と千秋くんを包み込む。 「わぁ……」  春色の花びらが舞い踊る、絵本の中みたいに不思議で、夢の中みたいな景色。私が、小さい頃から大好きな異能(アビリティ)の力。桜吹雪に囲まれて目を輝かせる千秋くんを見て、私はただ、嬉しかった。 「春花ちゃんの、アビリティ、綺麗だね。僕には……真似できないや」 「えへへ……。でもさ、アビリティって、人それぞれで違うでしょ?千秋くんのアビリティは何なの?」  その質問をした途端、千秋くんの顔が、明らかに強ばった。 「ぼ、僕の、アビリティは…………」 「アビリティは?」 「…………みんなに嫌われる力だから、言いたく、ない……」 「え……?」  嫌われるような、力?  アビリティは、一人一人に与えられた個性。だから、アビリティを理由に、その人のことを嫌ったり、馬鹿にしちゃいけないんだって、1年生の冬に学校で習ったばかり。  私は、怯えた顔で俯く千秋くんの手を、さっきよりも強く握った。
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