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夏実さんは少し寂しそうに微笑んで、レジに向かって歩き出した。私も、慌ててその後を追う。
夏実さん、お父さんと離れて暮らしてるんだ。私もお母さんと離れて暮らすことが多いから分かるけど、きっとすごく寂しいよね……。夏実さんがそんな思いをしてるなんて、知らなかった。
私達は友達だけど、お互い、まだまだ知らないことが沢山ある。全部教えて欲しいなんて、そんな乱暴なことは思わないけど、夏実さんのこと、もっと知りたいな。
だって、せっかく友達になれたんだもの。いろんなお話がしたいよ。もっと仲良くなりたいよ。
でも、夏実さんに嫌な思いはさせたくない。早く仲良くなりたいけど、あんまりグイグイ迫ったら、きっと困らせちゃうよね。
うーん、もどかしいな……。
私はそんなことを考えながら、プロフィール帳のお会計を済ませて、夏実さんと一緒にお店を出た。
夕焼け空の下、橙色の光に照らされた商店街を、2人で並んで歩く。濃い色の影が、コンクリートに長く伸びていた。
「北原さん、……ありがとう」
「え?」
夏実さん、急にどうしたんだろ?
不意にお礼を言われて、不思議に思った私は首を傾げる。
「私、夏実さんに何かしてあげたっけ?」
私が尋ねると、夏実さんはクスリと笑って立ち止った。
「友達と買い物したの、初めてなんだ。……嬉しかったの。北原さんと買い物ができて。だから、ありがとう」
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