5

16/16
前へ
/141ページ
次へ
「眞冬くんが、私のこと考えてくれるのが嬉しかったんだよ!ちゃんと仲良くなれたんだなって思ったら、嬉しくて……!」 「春花……」  私が泣きじゃくっていると、眞冬くんは私の頭をポンポンと軽く撫でて、「仕方ないな」とでも言いたそうな笑顔を見せた。 「たく、ほっとけねえ奴だな。……俺も嬉しかったっての」 「え……?」 「くしゃくしゃでも、汚くても、いいんだ。お前が……大事な友達が書いてくれたものなら、なんだって嬉しいんだよ。俺はな」  眞冬くんはそう言って微笑むと、プロフィール帳を片手にスタスタと自分の席に歩いて行く。  その後ろ姿が……ちょっと、かっこいいなって思った。  午前7時半のチャイムが鳴る。  私はしばらく、眞冬くんのことを見つめていた。 「……春花ちゃん?」  声を掛けられて振り向くと、そこには不思議そうな顔をした千秋くんが立っていた。 「あ、千秋くん!おはよ!」 「ああ……うん、おはよう」  千秋くんは、挨拶をしてすぐに目を伏せてしまう。  あれ?今日の千秋くん、なんだか元気がないような……。 「千秋くん、どうかした?」 「う、ううん!なんでも、ない……」  千秋くんは首をブンブンと横に振ると、速足で眞冬くんの後ろにある自分の席へと歩いていった。 「千秋くん……?」  私は首を傾げながら、千秋くんが歩いていくのを遠くから見つめる。  なんでもないって言ってたけど、千秋くん、何かあったように見えた。  もし何か悩んでるなら、力になってあげたいな……。後で聞いてみよう!  私はそう決めて、自分の席に戻った。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加