5.5-1 千秋の気持ち

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5.5-1 千秋の気持ち

 教室のドアを開ける数秒前。ドアについてる窓から、仲の良い2人の姿が見えた。  春花ちゃんの頭を撫でる眞冬くんと、それを見つめる春花ちゃん。お互いが、お互いのことを、特別に思っているように、見えた。  教室のドアにかけた手が、カタカタと震える。胸から嫌な音がする。心に真っ黒な雲が掛かったみたいにモヤモヤする。  僕にとって、春花ちゃんは1番大好きな友達で、春花ちゃんにとっても、僕が1番であって欲しくて……。  でも、春花ちゃんは、そうじゃないんだ。  春花ちゃんには、他にも沢山友達がいて、僕なんて、その中の1人でしか…………ないんだろうな。  僕は胸の辺りをくしゃりと握りしめ、目を伏せる。  どうしたら、春花ちゃんの1番になれるんだろう。どうしたら、どうしたら……。  服を乱暴に握った手の力が強くなる。僕は自分の感情に溺れながら、ドアの窓越しに眞冬くんの姿を見た。  眞冬くんより、かっこよくなれたら……春花ちゃんは、僕を1番に見てくれるかな?  眞冬くんに、勝てたら……。  僕はドアに掛けた手にグッと力を入れる。 「……負けたく、ない」  そう小さく呟いて、僕は教室のドアを開けた。
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