5.5-2 眞冬の気持ち

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 俺は折れたプロフィール帳を伸ばして、バインダーに入れる。  真新しいプロフィール帳の、1ページ目。1番最初に春花に書いてもらおうと思ったのは、きっと、俺にとって、少なからず春花が特別だからだ。  太陽みたいに温かくて、春の日差しのように優しい春花。あいつのこと、もっと知りたい。もっと、親しくなりたい。そう思わずにはいられなかった。  この気持ちの名前なんて、知らねぇし知ろうとも思わねぇけどさ。  父さんと母さんみたいにはなりたくねぇけど……春花とは、これから先も一緒にいたいって思ってんだ。  俺はプロフィール帳を閉じ、机の中にしまった。  代わりに、1時間目の算数の教科書を机の上に出す。前の授業のノートをパラパラと見返していると、不意に、脳内に誰かの声が響いてきた。 ──春花ちゃんの1番になりたい。 「え……?」 ──春花ちゃんが、僕にだけ、笑ってくれればいいのに……。  暗く沈んだ声。この声は……転校生の?  俺はチラリと後ろを振り返って、転校生の顔を見た。  刹那、転校生の中の黒い感情が、俺の頭にベッタリと闇を塗りつける。  俺はその重苦しさに耐えきれなくて、慌てて前を向いた。
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