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「ち、ちょっと!全然大丈夫じゃないじゃない!」
夏実が慌てて駆け寄る音がする。
「体、起こせる?立てる?」
優しく体を支えられ、俺はふらりと立ち上がった。
「やっぱり、一緒に行こう。放っておくと、眞冬は絶対無理するから」
「……うん。ごめん」
「謝らなくていいよ。ほら、ゆっくりでいいから」
夏実はそう優しく声をかけて、俺に合わせて歩き始めた。
夏実の家で世話してる薔薇の香りが、俺の鼻腔をくすぐる。いつだってそうだ。夏実は、花の優しい香りがした。
その香りを嗅ぐ度に、何故か安心して眠くなるんだ。
きっと、幼稚園に通っていた頃から、あいつの隣で昼寝をしていたからだと思う。
あの頃は、ほんと楽しかったな……。
「眞冬、着いたよ」
夏実は俺に声をかけながら、保健室の扉をノックする。
「すみません、具合が悪い人がいて……」
夏実が声をかけると、保健室の中から、年配の女の先生が出てきた。
「はーい。あら、眞冬くん?顔色悪いわね……お熱測ろうね」
「……はい」
俺は先生の手を借りながら、ふらふらと保健室の椅子に座った。
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