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その後ろで、夏実が保健室を出ていく足音がする。
──眞冬、早く元気になるといいな。
その声が聞こえたのを最後に、保健室の扉が閉まった。
……なんで、俺のアビリティは一方通行なんだろうな。
俺の気持ちも、夏実に伝わったらいいのに。
「……また、ありがとうって言いそびれた」
俺がそう呟くと、保健室の先生は穏やかな声色でこう告げた。
「元気になったら、伝えてあげればいいわよ。何も死ぬ訳じゃないんだから」
「……うん」
俺はそれに頷き、体温計を脇に挟む。
しばらくして、ピピピピと音がなり、それを確認すると……37℃だった。
「眞冬くんにしては、少し高いわね。少し休んで、良くならなかったら、施設の人に迎えに来てもらいましょうか」
「……分かりました」
俺は先生に頷き、ベッドに横になり目を閉じた。
いつも一緒にいてくれる幼なじみの、優しい薔薇の香りを思い出しながら。
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