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「夏実さん!」  私は、座り込んでしまった彼女の肩を支える。すると、カタカタと小刻みな震えが伝わってきた。 「っ……お、お父さん…………」 「え……?」 「た、たす、けて……。お父さん、助けて…………!」  夏実さんは、酷く怯えた表情を高次元生物に向けていた。  パニックになっちゃってるんだ……!ど、どうしよう!! 「夏実さん、落ち着いて……!」 「い、嫌……死んじゃう、死んじゃうよ…………!」  夏実さんの呼吸が浅くなる。震えも激しくなる。  逃げなきゃいけない。でも、夏実さんを置いて逃げられないよ……! 「グォォォ……!」  高次元生物が雄叫びを上げ、その場に座り込む私達にゆっくりと近づいてくる。  右腕には、あのおじさんのものであろう血が滴っていた。  それを見て、私も固まってしまう。  頭に過ぎったのは、色濃い「死」の予感。  あのおじさんみたいに、痛い思いをしながら死ぬしかないんだって思ったら……怖くて、動けなかった。『桜』でみんなを守ることもできなかった。  ただ、高次元生物に、恐怖の眼差しを向けることしか……できなかった。  もうダメだ。そう思っていた……けど。 「っ…………、来るなッ!」  私達と高次元生物の間に、千秋くんが立ちはだかった。 「友達、を…………僕の、大好きな友達を、傷つけるな!!」  千秋さんはそう叫んで、右手から炎を放つ。  燃え上がる、深紅の炎。それは、高次元生物を焼き尽くそうとする。
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