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燃える炎が、高次元生物に纏わりついてメラメラと激しく踊る。千秋くんのアビリティが強力なのは、誰が見ても明らかだった。
……でも、高次元生物を倒すには、至らない。
「グォォォッ!!」
高次元生物は、炎で燃える腕を振り回しながら、千秋くんに襲いかかってきた。
「千秋くん!!」
「っ…………!」
千秋くんに、高次元生物の硬い拳が迫る。
車をめちゃくちゃにしちゃうほど、硬くて強い拳。そんなの、喰らったら…………!
千秋くんが、死んじゃう……!!
嫌だ、嫌だよ!嫌だ!!
「誰かっ…………助けて!!」
私がそう叫んだ、次の瞬間。
「そいつから、離れろッ!」
聞き覚えのある叫び声と共に、高次元生物の頭に小石が投げつけられた。
コツン、と音を立てて石が地面に落ちる。
私は、ゆっくりと振り返る高次元生物と共に、その声の主を瞳に映した。
黒い短髪。紫色のパーカー。
「眞冬くん……!」
大事な……友達だった。
急いで駆けつけてくれたのか、それともまだ具合が悪いのか、息が上がって肩が上下してる。
でも、眞冬くんは、苦しそうな顔は一切せずに、大きな声で私達に言い放った。
「春花!夏実!転校生!!そこを動くな!!」
「え……!?」
眞冬くんの意外な指示に、私は耳を疑う。
「動くなって、どういうこと!?逃げろじゃないの!?」
「いいから!俺のこと信じろ!!」
眞冬くんの真剣な表情を見て……私はしっかりと頷いた。
高次元生物が、メラメラと燃えたまま、眞冬くんに近づいていく。
怖かった。心配だった。でも……私は、動かなかった。
眞冬くんのことを、信じるって決めたから。
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