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「そ。知ってるようで良かったわ。えっと……こっちの子は大丈夫?」  芽里奈さんは、夏実さんのことを心配そうに見つめる。夏実さん、まだ身体の震えが止まってない。呼吸も浅い……。 「夏実さん、もう大丈夫だよ!」 「っ……、き、北原さん……」  夏実さんは、潤んだ瞳を私に向ける。その表情からは、普段のしっかりしてて頼りになる夏実さんの面影はなかった。 「ご、ごめん……私…………な、何も、できなくて……」  震えながら俯いてしまう夏実さんの背中を、向こうから歩み寄ってきた眞冬くんが優しくさすった。 「夏実、大丈夫だ。もう大丈夫。誰も死んでねぇし、誰も傷ついてねぇよ。俺も転校生も、春花も無事だ」 「ま、眞冬……」 「ほれ、落ち着け。深呼吸しろ。吸って…………吐いて…………」 「うん……、すぅぅ…………はぁぁ……」  何回か深呼吸して、夏実さんは、やっと落ち着いた表情を見せてくれた。 「……ありがとう、2人とも」  夏実さんがそう言うと……眞冬くんは、頭を掻きながら千秋くんの方を見た。 「礼なら、転校生にも言ってやれ。あいつがいなきゃ、間に合わなかった」
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