7人が本棚に入れています
本棚に追加
6.5 助けに来るまで
午後の授業が始まってすぐ。体調が良くならなかった俺は、結局、施設の兄ちゃんに迎えに来てもらって、学校を早退した。
「眞冬、うち着いたぞ」
施設のシルバーの車を駐車場に停めて、運転手の金髪の兄ちゃん……輝樹にぃが俺に声をかける。
「うん……」
「まだ具合悪いのか?顔色、あんまり良くないけど」
輝樹にぃに覗き込まれて、俺は思わず顔を逸らす。
輝樹にぃは悪い人じゃない。寧ろ、春花と同じ優しい人だ。
ただ、俺は昔から輝樹にぃにべったりで……、甘えてばっかりだったから、少しでも自立したくて必死なんだ。
だから、弱いところとか、子供っぽいところとか、あんまり見られたくない。
「眞冬?」
「っ……、大丈夫!輝樹にぃは心配性なんだよ」
俺はそう言って、車から素早く降りる。バタンとドアを閉めて、スタスタと施設に歩いていた時だった。
ガシャン!
近くで、何か壊れる音が聞こえたのは。
「なんだ……?」
俺は後ろを振り返る。すると輝樹にぃも不思議そうに辺りを見渡していた。
「なんか、壊れた音が聞こえたな。向こうで何かあったのかもしれない……。オレが様子見てくるから、眞冬は家で休んでて」
「あ、うん……」
向こうで何があったかは、気になるけど……まだ体調も本調子じゃなかった俺は、素直に家の中に入ろうとした。
……でも、ドアノブに手を掛けた時。
聞こえたんだ。
──みんなを、守らなきゃ…………!
転校生の、必死な『声』が。
最初のコメントを投稿しよう!