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ホロ苦、コーヒー
「この店にしようかな…。」
選んだ店は、私がよく来るハンバーガーショップだ。
店内に入ると、クーラーのかかった空気が心地よい。
店員の女性のはずんだ声が聞こえた。
「いらっしゃいませ~。」
私達は先に四人座れる席を見つける。
その後、コーヒー、バーガー、ポテトのセットを頼むと男女向き合った。
ホッと一息つくコーヒー。
コーヒーのほろ苦い味。
少し大人になった気分。
カップからの湯気が立ち上がって、ゆっくりと消えていく。
私はコーヒーをコクリと一口飲む。
彼、なべくんはつぶやいた。
「んー、美味しそう…。」
被ってる帽子を脱ぎ、ハンバーガーの包を開けて食べだした。
「私、この店、よく来るのよ。女子バスケット部員のお気に入りの店なの…。試合が終わった帰り道、よく寄っていくの。私達はここのメニューを言い換えて、言ってるのよ。ハンバーガーのことを肉バサミ、ポテトフライをあげ芋。店の人にこのセット下さいと頼むの。面白いでしょう!?」
私はいつになく、余計な事までベラベラと喋りだした。
可愛くしなきゃ…。
楽しくしなきゃ…。
そんな気持ちが私を特別に見せようとした。
店内の空気が私は少し暑かった。
手でパタパタとあおぎながら、後ろに深く座り直した。
彼は私をチラッと見ると
「トモさん…、トモさんの話、面白いよ~。そのハンバーガーの呼び方、君が考えたの?」
「そうなの…。面白かった?」
私の慌ててる姿を見てなっちゃんが笑った。
彼女の柔らかい髪が揺れた。
ふんわりと優しい雰囲気。
いいなぁー、なっちゃん。
乙女心は単純で複雑だ。
ケ・セラ・セラになった。
ポテトの味もかわいかった。
「これ食べたらどうする〜?」
「食べたら家まで送っていくよ。」
と浜りんが言う。
「サンキュー、それじゃ、帰りは別々ね。」
となっちゃんがうれしそうに言う。
「僕も送っていくよ。」
なべくんが言うと心臓がドキンとなった。
私は慌ててコーヒーを飲み干した。
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