たんれいな彼の顔

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たんれいな彼の顔

山の上にある中学校。 そこに通うことになってる私。 中学一年生。 和久井智代。 今日は入学式から三日たった日だった。 ひと学年は八クラスと少し多めの中学校だ。 ひとクラスは四十人となり、一年生だけでも 三百人近くにいた。 他校に比べて多い方だ。 私のクラスは一年四組。 チャイムがなり、あわてて教室に入る。 初めて座った席は後ろの方だった。 周りを見ると知らない子がいっぱいだ。 下の小学校だった私。 クラスの半分は下の小学校で、あとの半分は上の丘の小学校生だ。 知らない顔の生徒のほとんどは上の学校生だ。 教室の戸がガラッと開く。 担任の先生が入ってきた。 「おはよう。」 「おはようございます。」 「はい、はやく着席する。」 私はあわてて席に座る。 先生の顔を見るとサル顔。 怒った顔は、マントヒヒ顔。 三日たった今日でもまだ慣れなかった。 「皆、聞いてくれ、今日は授業という授業はないんだ。ホームルームとクラブ見学があり授業となるのは明日からだ。」 と先生は皆に告げる。 「はーい、わかりました。」 「さっそく明日からお弁当持参で、六時間授業となる。」 中学校生活も大変だなぁー。 私はため息をついた。 制服を身にまとい、規則正しい生活になれるのは少し苦だった。 だけど小学生の生活には戻れない。 そんなことを考えてると急に不安になってきた。 こんな感じで過ごしていくのだろうか。 違和感が増していく。 もっとよく観察しようと周りを見た。 小学校の自由な感覚とは別に淋しい感じもした。 少しホームシックになっている私。 前から配られてきたプリント。 プリントに目をおとした。 何気なく後方はとプリントを渡す。 後方の男子は、目が合うとニッコリと微笑んでくれた。 アレッ…、はじめて見る顔だ。 たんれいな顔の彼。 控えめで印象はとても良かった。 ふと窓の外を見るとまぶしいくらいの光が差し込んできた。 自由な感覚にも似た気持ちだ。 あれ…あれ。 彼を見ながら ー中学生活もいいかもしれない。 私はそう思うことにした。 さっきの彼の笑顔。 人懐っこい顔だった。 落ち込んだ気分はどこかへといってしまった。
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