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告白
一時間経って、夕方六時になっていた。
私はまだB棟の階段の下に行ってなかった。
行けないまま…。
ー なべくんはもう来てるのだろうかー。
ー ミヨちゃんはもう話してるのだろうかー。
少しずつ向かって行く先に何があるのだろう。
不思議と何も考えられなかった。
一歩ずつ歩いて階段を降りていく。
どうしよう…。
例え失敗したとしても言ってよかったとなるかもしれない。
彼の生活に少しふれてみたいけど壊れてしまう…気がした。
私は二人が待つB棟の階段の下に向かう。
少し階段を降りていくと、下からの話声が聞こえてきた。
彼と彼女の声だ。
ミヨちゃんの話声が聞こえてくる。
「それでどうするん?、付き合ってあげてもいいかもしれんよ。」
「……。」
「無理なん?」
「付き合ってどうやって…。」
と言うなべくんの声。
私はドキンとする。
ミヨちゃんはゆっくりとうなずき、とりなすように聞く。
「トモちゃんは、私、小学校の時からずっーと一緒やけど、優しくええ子よ。最初、交換日記からでもいいよ。渡辺くんもその方が付き合いやすいでしょう?」
ミヨちゃんはなべくんの目をじっと見つめた。
私の胸の中が、あせりと期待と不安が入り混じる。
彼女は小首をかしげた。
「いいよね。」
と一言いうと、なべくんは、
「いいよ。」
と軽く返事をした。
私の何かが崩れた。
一瞬だけ怖いと思った。
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