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「圭一、圭一! あれ、やっぱりおかしいって。絶対なんかあるって!」
まどろみの中でクラスメイトたちの話し声が子守唄となり、そろそろいい感じに意識がふつと途切れそうになっていた矢先、甲高いヤツの声が頭上から降ってきた。アイス200円。心の中で「奢れ」と想像上の彼を睨みつけて顔を上げると、想像以上に慌ただしい様子の彼の姿が目に飛び込んできた。
「なんだよ」
ジト目で新こと友人・吉村新を見上げたのだが、彼は入眠を阻害された俺の不快な気分など意に介さない様子で「だーかーらー」と大きな声を出した。
「最近の羽鳥さん、様子が変だって!」
「ああ、またその話か……」
羽鳥、というのはこのクラスの絶対的女王羽鳥蘭のことだ。女王と言っても、別にクラスメイトを牛耳っているとか、彼女に逆らえないとか、そういうことではない。彼女自身はとても良い人だ。ただ、その容姿端麗な見た目と、勉強もスポーツも完璧にこなしてしまう器用さが、一般人には近寄りがたい「女王」感を醸し出している。立ち居振る舞いなども上品でそつがなく、ひそかに彼女を慕っている下級生も多い。
しかも、彼女のおじいさんはここら一帯の地主だと聞く。噂なので本当か分からないが、確かに学校に来る最中に目を凝らして民家の表札を見てみると、いくつか「羽鳥」という名前が見受けられるから、本当なのかもしれない。
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