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『なあ、俺明日神崎からチョコもらえるかなあ』
『もうその話は何度もしただろ。もう明日に備えて寝とけよ』
『だって不安になるだろ。結構アプローチしてたし、打ち解けてもきてたからいい返事をくれても良いと思うんだけどさ。神崎の幼馴染様の意見はやっぱり聞いておきたいわけ』
『だからなるようにしかならんだろ。もう俺は寝るぞ』
そう長瀬に返答すると、返信が帰ってこないうちに俺はスマホの電源を落とす。
長瀬とのやりとりを始めたのは20時過ぎだというのに、現在時刻は23時をとっくに越えていた。
友人の長瀬は、俺・三上大地の幼馴染の神崎さくらに恋している。
以前彼から「神崎のこと、お前はどう思ってんの?」というメッセージがいきなり飛んできたときはびっくりしたものだ。
自分は神崎の事が嫌いでは無い。むしろ好きだ。小さい頃から長く関わってきたのだからお互いのことをよく知っている。ただ、恋愛の好きかといわれると首をかしげてしまう。どこか勝ち気でいたずらっ子のような性格のあいつのことは、どちらかというと悪友のほうが近いように感じていた。
だからこそ、長瀬が神崎を好きだといったときも、あいつのことを好いてくれる奴がいるのかという感想だった。
そのため、神崎との仲を取り持つのに協力してくれないかと相談されてからは、それとなく長瀬のことをアピールしたり、一緒に行動する機会を作ったりもして彼らの中が深まるのをそれとなく後押ししていた。
一週間と少し前、長瀬は神崎に告白をしたらしい。
そして、その場では返事をもらわず、バレンタインの日までに返事をしてほしいと言ってすぐに逃げ帰ってしまったそうだ。
誰かに告白するのは初めてだったようだが、不器用な長瀬らしいな、と聞いたときは笑ってしまった。
まあだからといって、告白した日から毎晩のように自分に不安や相談の連絡がくるのは多少面倒だと思ったりするのは、長瀬には内緒である。
俺は部屋の電気を消して、ベッドの中に潜り込んだ。
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