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一
ある日のことでございます。
地球にもようやく春が訪れたようで、極楽郷がちらほら世界中にありました。
そこに光沢のある銀色の髪をした1人の聖者が、ちかくの蓮の池のふちをぶらぶら歩いていました。
蓮の池の表面には、豊かな浮葉が顔を出しており、花が咲くにはまだ早いですが、ことしもシーズンがくれば、48種類ほどの蓮が池一面に咲くのが目に浮かびます。
花のまん中には、金色の蕊あり、どれも違った好い匂いが、絶え間なくあたりへ溢れるためにいまから待ち遠しくてたまりません。
ふと、池の向こうの東に目を向けると太陽がちょうど差し込んでおります。
聖者は、あさから、悩み一つ無く透き通ったこころでございました。
聖者は、蓮池の西にある滑らかに流れる滝の水を浴び御釈迦様と遊んでおりました。
水浴びを終えた聖者は、その池のふちに佇み水の下の様子をみました。蓮池の下は、ちょうど畜生修羅界が映っておりました。
線引することはできませんがおおよそ、天上界・天上人間界・修羅畜生界・餓鬼界・地獄界となっております。
人間界は、限りなく極楽郷となり、天上人間界の一部にメタバースとしてカプセルしきとして肉体が保存され、その肉体たちはメタバースの仮想空間に属し修羅畜生界になったのです。
聖者が、ちょうど蓮の浮葉から修羅畜生界を覗くと、修羅畜生界では怒りや苦しみから争い、訴訟が起きておりました。
お互いが傷つけ合う弱肉強食の世界で、頂点こそに意味があり、そのためなら人や動物、あるものを殺し、壊してでも到達することがよしとされていました。
人や動物、あるものと言っても、バーチャルリアリティなためアバター同士の殺し合いです。
メタバースの世界でなければ、核爆弾を落とし合い地球は木っ端微塵になっていることでしょう。
もちろん、アバター同志は痛みを感じておりその不安からまた争いだすのですが、プレイヤーたちは、自分がアバターとすれ自覚することもなくなっておりました。
そんな修羅畜生界のアバターの1人にガンダタという男が1人・外の罪人と一緒に蠢いている姿が、聖者の目に止まりました。
このガンダタという男は人間界にいるときに、怠惰で自分に与えられた仕事を放置し、大きな人災を起こし他人の命を殺めてしまったり、家庭内のDVなどいろいろな悪事を犯した犯罪者あり、良心の呵責に苛まれています。
それでもカンダタは、人間界にいた頃たった一つ善い事を致した覚えがあります。
と申しますのは、ある時この男が娯楽で登山をしていますと、道にまだ大人になっていない蜘蛛が一匹、弱りかけていました。
ガンダタは、怠惰なのでその蜘蛛を放置しようとしましたが、「いや、いや、これも小さいながら、まだ生きることができる命に違いない。」と、こう急に思い返しました。
カンダタは、この蜘蛛に情けをかけ、ただ死を待つだけのこの命を手に取り、脇道の水に置いてやりました。
蜘蛛は、その水を飲み、脱水症状から救われ5年生きました。
聖者は、修羅畜生界のメタバースの世界をご覧になり、ガンダタには蜘蛛を助けた慈悲の心がある。このカンダタにチャンスを与えるべきだと考えました。
聖者は、半月のポケットからピンボケしないよう眼鏡を取り出しかけました。
カンダタの様子をはっきりと見ることしたのでございます。
ちょうど、天上人間界の翡翠のような蓮の葉の上に一匹の蜘蛛が美しい銀色の糸を数本かけておりました。
その一本を手にとり、まっすぐにそれを降ろしました。
丁度、三途の河をこえ、針の穴を一つ潜らせて修羅の道、もう一つ針の穴を潜り修羅畜生界に行き着きました。
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