1/2
前へ
/13ページ
次へ

カンダタは、途方に暮れることなく、田畑やヤクたちと幸福に暮らしていましたが、近所の人が、「に行ったところ、数海里、東陽明門があるので、一度行ってみてはどうか?」と、すすめられた。 「それも、なにかの縁かもしれない」と、清い湧き水のような、こころを持ち向かうことにした。 教えてもらったところに、それはそれは光明として門があった。 以前の西の門と違い、死体の山も老婆もいなく、なんとも好い匂いがした。 カンダタは、自問自答していた。 「果たして、残虐極まりない虚言癖で怠惰な自分がこの門を潜って善きものか、否か」 すると、コツンコツンと門の向こう側から音が聞こえます。 誰かが、門の向こうにいることは分かりましたが、山の極地でもあり、あたりは霧に覆われておりました。また、門の円柱には、蟋蟀が数匹鮮やかに輝く金色におります。 そんな様子を眺め、自然とカンダタの両端の口角が引力に逆らって上がっていることに気が付きました。 と、言っても、霧の向こうにものがあるかもしれません。 カンダタは、注意深く門の向こうに、探り探り、慎重に、小股で半歩ずつ進んで手を伸ばしてゆっくり門の向こう側に入っていきます。 ちょうど、両肩が門の向こうに入った頃、足元には敷居があり、小股で歩くのをやめ大股で門を跨ぎました。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加