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聖者は蓮池のふちに座り込み、一部始終を我儘な幼子の喧嘩のように見守っており、カンタダは、他のアバターに石で体を結ばれ血の池の深くに沈められました。 ただ、カンダタは蜘蛛の糸を握りしめ手放すことはありませんでした。 聖者は、口角を上げ布袋さんのような嬉しそうな御顔をなさりながら、ぶらぶら蓮池のふちえを歩き始めました。 それもそのはず、カンダタは自分だけでなく、多くの罪人をメタバースの世界から救おうとした、カンタダの慈悲に深い感銘を受けたのでございます。 しかし、その慈悲を他の罪人は、良く見聞きせず我先に抜け出そうとし、カンタダを懲らしめ石に沈める様でございます。 天上人間界ももう牛に近くなっております。 ふと、池をみますと、蓮の花が一輪開花しております。 花のまん中には、金色の蕊があり、なんとも好い匂いが、絶え間なくあたりへ溢れております。 聖者は、その日の暮方にカンダタのカプセルにあるプログラムを施しました。 一輪の蓮の花から、そっとその様子を幼子のように見守っております。
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