鬼狩り

1/1
前へ
/5ページ
次へ

鬼狩り

都で鬼の噂が出始めて数ヶ月。子供と女に狙いを定めていたのかと思ったが、老人も姿を消し始めた。力の弱い者ばかりを殺して食らう卑劣な鬼だ。 赤い髪をした酒好きの鬼と、銀髪で女のように美しい鬼。 誰が呼び始めたのか、自身で名乗ったのかは知らないが『酒呑童子』と『茨木童子』と呼ばれている。 「頼光、お前こんなとこで何してんの?」 「坂田か…。鬼について、何かわかる事があればと思って歩いてるが、特に収穫はなくてな。」 「そりゃそうだ。捕まえるなんて無理だからな。」 「無理ではない。姿を見たものがいるのだから。」 「坊っちゃんはこれだから困るねぇ…」 「どういう意味だ…?」 坂田と俺はあまり意見が合わない。 だが、だからこそ話をするのは有意義だと思う。 「『姿を変えられる、誰にでもなれる』…その噂が本当なら、人を殺す時に鬼の姿をさらすと思うのか?」 「いや……」 「一番最初に『赤髪と銀髪が人を殺すところを見た』って証言してる奴は、未だに見つからない。調べるなら先にそいつにした方が、犯人の居どころを捕めるんじゃね?」 「どういう意味だ?」 「俺らが探してる『鬼』ってのは、何を指してるか考えろってこと。じゃ、俺は行くとこあるんで。」 「おい!」 急いで呼び止めたが、坂田は気にせず行ってしまった。 何を指しているか…。 俺が考えているものとは何か違うのだろうか…。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加