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鬼狩り
都で鬼の噂が出始めて数ヶ月。子供と女に狙いを定めていたのかと思ったが、老人も姿を消し始めた。力の弱い者ばかりを殺して食らう卑劣な鬼だ。
赤い髪をした酒好きの鬼と、銀髪で女のように美しい鬼。
誰が呼び始めたのか、自身で名乗ったのかは知らないが『酒呑童子』と『茨木童子』と呼ばれている。
「頼光、お前こんなとこで何してんの?」
「坂田か…。鬼について、何かわかる事があればと思って歩いてるが、特に収穫はなくてな。」
「そりゃそうだ。捕まえるなんて無理だからな。」
「無理ではない。姿を見たものがいるのだから。」
「坊っちゃんはこれだから困るねぇ…」
「どういう意味だ…?」
坂田と俺はあまり意見が合わない。
だが、だからこそ話をするのは有意義だと思う。
「『姿を変えられる、誰にでもなれる』…その噂が本当なら、人を殺す時に鬼の姿をさらすと思うのか?」
「いや……」
「一番最初に『赤髪と銀髪が人を殺すところを見た』って証言してる奴は、未だに見つからない。調べるなら先にそいつにした方が、犯人の居どころを捕めるんじゃね?」
「どういう意味だ?」
「俺らが探してる『鬼』ってのは、何を指してるか考えろってこと。じゃ、俺は行くとこあるんで。」
「おい!」
急いで呼び止めたが、坂田は気にせず行ってしまった。
何を指しているか…。
俺が考えているものとは何か違うのだろうか…。
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