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月夜
「まてーっ!この人殺しっ!!」
「ん?」
満月の夜、いい気分で散歩をしてると、後ろから鎌をもった男が走って来た。
「死ねっ!!」
「!?おい、ちょっと待て!何の話だ?」
「うるせぇ!お前がチヨを殺したんだろ!!」
「は?いつ?」
「一昨日だっ!」
一昨日…は、元三と飲み比べしてた日だよな。
「それ、俺じゃねぇぞ。」
「騙されるかっ!赤毛の男がチヨを殺す所を見たって聞いたんだ!」
「誰だよ、それ言った奴。」
「知らねぇ!誰でもいい!犯人はおまっ…」
鎌を振り上げた男が、突然意識を失って倒れた。男を背後から手刀で一撃したのは、俺の弟分。
「朧…、お前ちょっとやりすぎだろ。」
「月夜がいつまでも話を聞いてるのが悪い…。」
「いや、犯人は俺じゃないけど、チヨって子を殺されたってのは嘘じゃねぇだろうし、話くらい聞いてやっても…」
「……馬鹿なの?」
「え?」
「犯人扱いされてるのに、何で話を聞いてやらなきゃいけないのさ。」
「まぁ、人情ってやつだよ。」
「へぇ、人情ね。そんなもの、俺達には無いと思うけど。」
まぁ、鬼だからな…。
「んだよ…ああ言えばこう言う。お前は嫌な奴だな。小っせぇ時は可愛かったのによ。」
「可愛い…?」
あ……まずい、朧に『可愛い』『綺麗』は禁句だった!すげぇ睨んでる!!
「ちょっ、落ち着け。自分で歩くから、腕を離せっ!……待て、早まるなっ!!」
「うるさい」
俺は朧に手首をきつく捕まれて、そのまま大江山まで投げ飛ばされた。
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