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大江山
「…イテェ……」
足から無事着地したのに胸元まで地面に埋まるとか、ありえねぇ。華奢なのに力強すぎだろ…。
「あー!月夜が埋まってるぞ!!」
「ホントだー!」
俺の着地の音がうるさかったからか、古家から子供がわらわらと走ってきた。
「お!良いところに来たな。皆で引っ張って、俺を助けてくれ!」
「わかった!!」
子供達に腕を引っ張られて、俺は無事脱出できた。
「ほら、手ぇ洗って早く寝ろ。」
「えー、やだぁ!」
「まだ眠くない!」
「月夜、遊ぼう!」
まぁ、まだ戌の刻だしその気持ちはわかる。
だが、そうも言ってられねぇ。
「いいのか?朧に見つかったら朝飯抜きだぞ。」
そう言うと、皆一斉に家へ入っていった。
なんだ?今日はやけに聞き分けがいいな。
「安心しなよ。飯抜きは月夜だけだから。」
……なるほど
もう朧が帰って来てたのか。
「朧、お前はもう少し俺に優しく出来ねぇのか?」
「優しくしたら調子に乗るから無理。」
その言い方…。
「とりあえず、川で体洗ってくる。」
全身砂だらけで眠れねぇ。
「…月夜」
「んだよ。」
「これ以上この山に子供を連れてくるな。また1人増えてる。」
「仕方ねぇだろ、落ちてたんだから。」
「落ちてたんじゃなく、捨てられてるんだよ。」
「大して違わねぇだろ。」
「どっちでもいい。もう拾ってくるな。」
「ちょっとくらいいいじゃねぇか。何とかなってんだし。」
「何とかなってるのは、大天狗様のおかげだよね。」
「そうだっけ…?」
「……もう一回、今度は頭から土の中に埋めてあげようか?」
目が本気だ。
朧が言う事は間違っちゃいねぇ。
天狗のジジィが結界を張っているから、俺が拾ってきた子供は獣からも人間からも襲われず、古家で住んでられる。
「天狗のジジィには感謝してる。けど、飯は俺が狩ってる獣だし、たまに働いてる。皆で畑も耕してるし問題ないだろ。」
「人間にでも出来るような事で威張らないでくれる?」
「仕方ねぇだろ。俺ら妖術得意じゃねぇし。」
鬼は馬鹿力だし、体は頑丈で強い。けど難点は、妖術が苦手。何かに化けるくらいしか出来ない。
しかも、同じ容量のモノ。小さな虫に化けるとか、そういうのはムリ。
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