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「わかった。もう連れてこねぇよ。……たぶん」
「『多分』じゃなく『絶対』」
「俺は嘘は嫌いなんだよ。」
「…禁酒するなら許してあげなくもないけど。」
「なにっ!?俺に酒を呑むなと……?鬼か…お前は……」
「何それ、全然面白くないし。」
「いや、笑かそうとしてねぇから!」
「何でも良いから、さっさ体洗ってきなよ。汚い。」
水浴びに行く俺を引き止めたのはお前だろ!って言ってやりたいが、頭から埋められたくねぇし、止めておこう。
うーん…
何か前より朧が厳しい気がする。
気のせいか?
やたらと俺を迎えに来るようになったのもおかしいんだよな。
今日だって、鎌の男を気絶させる必要なんてなかったし。
「人殺し…か。」
俺は殺しちゃいねえけど、俺以外の赤い髪の人間が人を殺してる。
今度から都に行くときは黒髪で行こう。それで、問題解決。
と、俺は軽く考えすぎていた。
都中にある掲示板みたいなもんに、殺人犯の姿絵が貼ってある。顔はどう見ても俺だ。
『人食い鬼』『子供を連れ去る鬼』『殺人鬼』
既に8人殺していると書かれてある。
しかも、
『首をとった者には、米一俵』
俺の首、安すぎねぇか?
「やっぱり……してやられたね。」
俺の後ろに、女に化けた朧がいた。
「何か知ってんのか?」
「数日前から、都で人が拐われてるって話が出てた。最初は月夜が拾ってきた子供の事を言ってるのかと思って調べてたんだよ。」
「あいつら、落ちてたんじゃなかったのか?」
山の中腹に転がされてたり、真冬に凍え死にそうになってた子供だったんだが…。
「そう簡単な話じゃない。多分これは始まりで、これからも俺達は子供や女を連れ去る鬼として、噂を広められる。」
「んなの、何でわかんだよ。」
聞くと朧が溜め息をついた。
「…口減らしじゃない?最近、都でも飢えて死んでる人がいるから。」
「それが、何で俺達のせいなんだ?」
「誰かのせいにすれば、都合が良いから。不満は俺達に向くでしょ。今日は帰るよ。当分、都には顔を出さない方がいい。……俺達が化けてる事に気付く奴がいないとは言い切れないから。」
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