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愛と中毒性
「僕は愛が嫌いだ。いいや、大嫌いだ。何故って? そんなの1つしかないじゃないか。愛とは中毒性のあるものだからだ」
少々光が差し込む小さな部屋で、目の前にいる検察官にそう語った。
「煙草も酒も嫌い。だって1度煙草を吸ってしまうと、1度酒を飲んでしまうと。病み付きになって戻れなくなってしまうから」
汚れた床を光が差す。僕はそこを見つめては、また口を開く。
「1度煙草を吸ってしまうと、また吸ってしまう。酒を飲んでしまうと、またとまたと飲んでしまう。それと同じように、愛もそうだ」
喉から必死に声を出す。段々と声は掠れて、消えてしまいそうになる。
「1度愛を貰うと、もっともっとって。貰った愛より更に大きな重い愛を求めてしまう。それを貰わないと満足しなくて、苦しくなって、死にたくなる。だから、僕は愛が嫌い。煙草も酒も嫌い。あと――」
――うん、△△の事きちんと愛してるよ
「愛してるよって言うアイツも嫌い」
汚れた床に、瞳から溢れ出す涙が溢れ落ちる。思わず笑みがこぼれた。
*
『こんな状況で笑いながら泣くなんて。コイツは可笑しいですね』
『あぁ、そうだな。検察官の××さんも少し引いてるぞ』
『まぁ、予想はしてましたが……やっぱりコイツは可笑しいです』
『何を今更。最愛の恋人を殺した時点で、コイツは普通の人間とは違う可笑しい奴じゃないか』
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