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好きと嫌い
君の事が好きだった。大好きで、大好きで、大好きで。だから、近付きたかった。都合の良い人間扱いされても良かった。だから傍に置いて欲しかったし、恋人にでもなりたかった。だけど、そんな願いは叶わなかった。
「今日何処でデートする?」
「えー? そうだなぁ、△△の家が良いかな」
「もうっ! □□ったら、えっち~!!」
そんな事を大声で話す、親友と私の好きな人。2人が楽しそうに恋人同士の話をしているのを見ると、胸が焼けるように痛くて思わず涙が出てきそうだった。親友は私が□□を好きなのを知っていたはずなのに、何でなの。そんな気持ちがぐるぐると私の気持ちを乱す。こんな思いをするのが嫌で、私は2人と距離をとった。傍にいるのが苦しかったから。
「○○!」
好きな人が私の名前を呼ぶ。だけど私は無視して歩き続ける。□□は私の目の前にきて「何で無視するんだよ! 俺、何かした?!」と焦りながらたずねてくる。何? 急に。そんな事を思いながら「無視してないけど?」と冷静な対応をとる。
「だって、いつも話しかけてきてくれてたのに、最近は全然話しかけてきてくれないじゃん? 話しかけたら無視するし……なぁ、俺の事嫌いなの?」
捨てられた子犬のような表情に思わず心の天秤が揺れる。もう無理だ。ごめんね。心の中で謝りながら、心の感情とは裏腹に、満面な笑みを浮かべた。
「いつ私が□□を好きって言った? 私、□□が嫌いなの。だから、話しかけてこないでくれる?」
傷付いた表情を浮かべる□□を横目に私は歩いた。
「俺は○○の事好きなのにっ……」
□□は小さな声でそう呟いた。聞こえていたけど、聞こえていない振りをした。それなら、何で△△と付き合ったの? そんな疑問と好きだと言う思いを奥底に沈めて鍵を閉めた。
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