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ラブソングを君に
君が、とてつもなく大好きだった。
ツンデレな性格で、色々と不器用。甘えたそうにしているのに、甘え方が分からないから、僕が甘えたいんでしょ? と言う事にして甘えたり。まぁ、とにかく可愛い妻。
僕はバンドをやっていて、バンドで披露する曲は全て、僕が作っている。スランプ中に、彼女に出会って一目惚れ。沢山アタックして、やっと恋人になれた。それから色々あって、結婚して今では夫婦だ。
それからと言うもの、僕は毎回毎回君にラブソングを送っている。
「私に向けたラブソング作るとか、どんだけ重いの」
何て袖で口元を隠しながら、内心嬉しそうにする君を見ていると、凄く愛おしく思う。
その表情、仕草、声。全てが好きなんだ。だから、そんな感情を歌に込めて皆に聞いて貰いたいんだ。……何て言えば、君はどんな顔をするのだろう?
照れてる君に、そっと口付けをしては笑って見せた。
*
――……線香の匂いが漂う。
鼻の奥にツンときて、その香りが漂うだけで涙がこぼれてしまいそうだった。
だけど我慢して、袖で涙を拭い、君が好きなカップケーキを添える。
「あのね、私ね。ずっと君の事を愛していたんだよ? だけどね、不器用だからかなぁ……? 君と一緒にいると素直になれなくて、甘えたりとか、可愛さもなくて……何て、今言っても遅いよね」
私を沢山愛して、ラブソングを毎回送ってくれた君は、1年前交通事故で亡くなった。
突然の事で、勿論驚いたし、何よりしっかりと自分の思ってることを言えば良かったと、もっと甘えていれば良かったと、色々君が死んでから後悔する事が沢山あった。
私は俯く。涙を堪えていたが、耐えきれなくて涙が溢れる。袖で拭うが、溢れるばかりだ。キリがない。
私は立ち上がって、仏壇に背を向けた。あぁ、そろそろ時間か。感情に浸っている時間はない。
「行ってきます」
仏壇に飾られている貴方の写真に向けて、そう言っては、近くに置いてあったギターを取った。
*
――……「続きまして! 大ヒット曲! 愛してる人への甘酢っぽく、何処か悲しいラブソング! ✕✕さんで、『ラブソングを君に』」
アナウンサーが、そう告げると一気に歓声が聞こえてくるが、数秒後には一気に静かになる。
目を瞑っては、マイクに向かって口を開く。
ねぇ、○○くん。愛してるよ。君が私にラブソングをくれたように。
遅くなったし、意味ないかもだけど、私も君にラブソングを捧げよう。君への愛を込めて。
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