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「先輩……」
病院では柿崎が手を握りながら、香織に付き添っていた。
「俺が昨日仕事手伝ってれば、こんなに体調悪くならなかったかもしれないのに……」
柿崎は目に涙を溜めながら、香織をじっと見つめる。
ドタドタドタッ。
春也は勢いよくナースセンターに駆け込んできた。
「すいません、岡田香織の病室はどこですか?」
「そこの突き当たりの病室です。あと危ないので病院では走らないでくださいね」
「ありがとうございます」
春也は走らないように早足で病室に向かった。
「香織さんっ!」
春也が勢いよく病室の扉を開けて入ると、柿崎が香織の手を握っているのが目に入った。
「佐川先輩! どうしてここに……」
「そ、それは……」
春也は香織との約束で2人の関係は会社の人には言わないと決めていた為、同様してしまった。
「俺、課長から早退の許可貰ってきたんでご家族の方が来るまで付き添おうと思ってるんです」
「そ、そうなんだ。俺も仕事早く終わったから一緒に付き添うよ」
春也は今すぐにでも柿崎の手を振り払いたかったが、どうすることも出来なかった。
「岡田さんは一体どうして倒れたんだって?」
「心臓発作を起こしたらしいんです。きっとここ数日プレゼンのことで忙しかったから、あんまり寝てなかったんだと思います」
「そうだったんだ……」
「昨日だって1人で残って残業してたし、俺も手伝うべきだったって後悔してます」
「そんなに自分を責めなくても大丈夫だよ」
春也は自分も手伝っていたとは言い出しにくい状況なのだった。
少し時間が空いて彩華が病院に到着した。
ガラガラガラッ。
彩華が扉を開けると春也と柿崎と目が合った。
「あ、私香織の妹の彩華です」
「同僚の佐川とこちらは柿崎です」
「お世話になってます。姉の状況は一体……」
「先輩は心臓発作を起こして運ばれました」
彩華はショックを受けて、香織の元に駆け寄った。
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