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しばらく作業を続けて気がつくと周りにはほとんど人がいなくなっていた。
香織が腕時計を見ると時刻は6時55分だった。
「やっばーい。集中しすぎて皆が移動してるの気が付かなかった。えっととりあえずスリープモードにしてっと。よし! 急がなきゃ!」
香織はすごい勢いでオフィスを出ると、そのまま向かい側のビルにある焼肉屋に駆け込んだ。
香織が靴を脱いで席に向かうと飲み物を注いでいるところだった。
「あー、良かった。乾杯に出遅れたら課長が拗ねること間違いなしだもんね」
香織は自分の座る場所を探すがどこも空きがない。
「えっと、私どこに座れば……」
「岡田先輩、こっちこっち!」
声がする方を振り向くと、後輩の柿崎悠介(24)が手招きをしている。
「あ、うん。今行くね!」
香織が柿崎のいる場所まで行くとそこには課長が座っていた。
「か、課長……」
「お! 岡田くん来たか。私の横が空いてるから良かったらここに座りなさい」
「は、はい……」
柿崎の奴、どうしてこんなハズレ席を用意してるのよ!
香織は柿崎の方を見て目で訴えるが、柿崎は嬉しそうにこっちを見ている。
あーあ、全然私の気持ち分かってないんだから。
「そういえば岡田さんお酒強かったっけ?」
「あ、それが私お酒が物凄く弱くてビール1本とかでも飲みきれないんですよ」
「あ、そうなの? それなら無理して飲まなくて良いからね! 私は割とお酒が強い方だからあまり酔わないんだよ」
ー30分後ー
「課長、課長っ! 起きてください!」
「私はまだまだ飲めるぅ。大丈夫だからぁ、心配しなくてもぉ……」
バタンッ。
大澤課長は生ビール2杯半で眠り込んでしまった。
「課長! 大丈夫ですか? 課長……! ちょっと柿崎支えるの手伝って」
「はい!」
机に突っ伏してしまった課長を部屋の隅に移動させようとする香織と柿崎。
少し離れた席から春也が2人の元にやって来た。
「俺、変わるよ」
春也は香織と交代して課長を支える。
「ありがとう、助かったわ」
春也と柿崎は無事に部屋の隅っこへと課長を寝かしつけ席へと戻る。
「ちょっと柿崎。私課長のお世話の席なんて希望してないんだけど」
「だって先輩がこないだ次は課長の隣に座って有給を増やすように直談判するって意気込んでたじゃないですか〜」
「それは冗談のつもりだったんだけど」
「そうだったんですか? すいません。今度お詫びにアイスでも奢るんで許してください」
「まったく。しょうがないから許してあげる」
「やったー!」
香織と柿崎が話していると、春也がグラスを片手に席を移動してきた。
「俺もここ来て良い?」
「うん。いいけど」
春也はさっきまで課長がいた席に座った。
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