9人が本棚に入れています
本棚に追加
「山口さん、品出し終わったらレジの方手伝ってくれるかしら?」
「はい!」
山口彩華(27)は大手アパレルブランドのミックスラブの店舗販売員としてアルバイトをしている。
増税などで客足が遠のくお店が多い中、このブランドはプチプラを売りにし連日繁盛していた。
彩華が品出しをしていると、1人のお客さんが花柄のワンピースを片手に近づいてきた。
「いらっしゃいませ。何かお探しのものはございますか?」
「あの、これと同じ商品でXSサイズが欲しいんですけど……」
「かしこまりました。今、確認してまいりますので少々お待ちください」
彩華はバックヤードに入り在庫を探すがXSは製造していなかった。
彩華はフロアへと戻りお客さんの元へ戻り説明をしに行く。
「お客様、申し訳ございません。こちらの商品はSサイズからのみ製造しているとのことです」
そのお客さんは不思議そうにワンピースを眺めている。
「他の商品で似たようなものをお探しいたしましょうか?」
彩華は違和感を感じてとりあえず言葉を発してみたが、お客さんは微動だにしない。
彩華が他の場所に移動しようとした時、急にお客さんが話し始めた。
「おかしいわ、視えるのに。あの店員さんこの商品のXSサイズは販売されるはずだから、在庫が入ったらここに代金引換で送って頂けますか?」
「はい、分かりました」
彩華はお客さんから名刺を受け取った。
「では。あ、最後にもう1つだけ。店員さんの大切な人に危険が近づいているみたいです。気を付けてください。では」
怪しいお客さんはいつの間にかフロアからいなくなっていた。
彩華は貰った名刺を見てみる。
「霊視鑑定士、福富マルコ……。見た感じ20代半ばだったのにネーミングがちょっとユニークね」
この日彩華は夜布団に入ってからもマルコに言われた一言が気になって仕方なかった。
最初のコメントを投稿しよう!