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「こんばんはー。調子どうよ」
9月下旬。朝晩は少し肌寒くなってきた夜、仕事帰り奏人さん家に顔出すと
「だいぶ良くなったよ」
ちょっと掠れた声でベッドから体を起こす。
「無理すんなよ。ポカリとか果物とか、食べられそうなもの買って来たから」
「……ありがと」
差し入れを冷蔵庫に入れながら言ったそばから咳込むのが聞こえて、ベッドに行った。
「熱は」
「微熱だよ」
「何度」
「……37度ちょっと」
額に手当てると、確かにそんなじゃないけどまだじんわり芯に熱持ってる感じ。
「横になってなよ」
「いいよ。昼間寝過ぎて飽きた」
「じゃあ、暇なら外でも見る?」
枕元のカーテン開けて、電気を消した。
「今日は、月が綺麗だから」
「ああ……お月見だったっけ」
立った俺の目線からは見えないけど、ベッドに体を起こした奏人さんに少し屈んで合わせるとギリギリ窓枠の中に見える。
「……ふうん」
移ると仕事に支障あるのでお互いにマスクしてるから表情は分からないけど、ちょっと嬉しそうに見える。
俺の方を向くと
「月が綺麗だね、……って意味は知ってる?」
「それくらい知ってる。夏目漱石だろ」
「うん」
「別に、そういう意味にとってくれてもいいけど」
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