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 鏡の中に連れてこられる前は、夕方だったはずだ。数時間も気を失っていたのか、それとも時間軸がおかしくなっているのか。どちらにせよ、夜中だろうと街の街灯すら消えているのはおかしい。  どうやらここは、見知った街でも、学校でもないようだ。本当に鏡の中の世界だとしたら、裏世界の学校と言ったところだろうか。  なにも分からないまま、穂香を探すこともできない。 「少しは落ち着いたかしら?」  相変わらず古風な話し方をする少女が、ミナミの隣に並んでカーテンを閉める。何かを警戒しているように、あたりに目を配っているようだった。  時子はミナミの背後に目をやった。つられて振り返ると、どうやら時計を見ているようだった。 「そろそろ時間になる。久しぶりに誰かとお話しできて、楽しませてもらったわ」 「時間って?」 「目が覚めたら、二階の二年一組の教室に来て。誰に話しかけられても、何も答えたらだめ。あの鬼が出ても、逃げないで、じっとしてやり過ごすの」  ミナミの両肩を掴み、時子は言った。その直後、また学校のチャイムが鳴った。  あたりが暗闇に包まれ、瞬く間に意識が遠のいていった。
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