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【二章】
すべて夢だったら良かったのに。
目覚めると、どこかの教室にいた。誰もいない教室は、元の世界と変わらない。並んだ机の前方には黒板がかかり、生徒たちのロッカーと日程を書くための掲示板が後方にある。
どこの教室も造りは同じで、学校のどの教室なのかは分からない。スマホを出して穂香に連絡を取ろうとしてみるが、繋がらない。電気のスイッチを押しても、明かりは点かなかった。
ここは、本当に元の世界ではないらしい。
ミナミは窓に近づき、カーテンを開いた。
「三階……」
窓の位置から、ここが何階なのか確かめ、あの少女が言っていたことを思い出す。
(二年一組に行かないと)
教室に来いということは、彼女も恐らくいるということだろう。穂香を探すにしても、あの化け物と戦うすべもない。今は、彼女と行動を共にした方が安全だ。
教室のドアを音を立てないように用心しながら開き、左右を確認する。
誰の気配もない。あの赤い化け物もいないようだ。
教室の柱に設置された白いプレートには、三年二組と書いてあった。ここから時子と合流するには、二階に行かなければいけない。
辺りは静かで、人の気配はない。この広い校舎で、穂香を見つけることはできるのだろうか。
彼女がいないかどうか、ミナミは教室の窓を覗きながら廊下を歩いていった。
「――穂香」
薄暗い廊下で、友人の名前をひっそり呟く。誰にも聞こえなければ、呼んだ意味なんてない。そう思ったが、大声を出して呼ぶわけにもいかなかった。
その時、どこかからドアを叩くような音が聞こえてきた。音のする方を見ると、女子トイレの方から聞こえてきていた。
不気味な暗いトイレのドアノブに手を伸ばしたが、すぐに引っ込める。
こんなところからドアを叩く音がするなんて、不気味すぎる。あの少女がいるとも思えず、ミナミは音に気付かないふりをして立ち去ろうとした。
「誰か……、助けて」
聞こえた声は、穂香そっくりだった。かすれて消え入りそうな声だったが、間違いない。
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