【二章】

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 廊下に座り込み、閉まったドアを見上げる。震える手を握り締めてスマホのライトをつけるが、薄暗い廊下で気持ちは落ち着かない。  今のはいったい何だったのか。ミナミは立ち上がると廊下を照らした。  震える手で照らした先に、白い運動靴を履いた足が見える。 「誰かいるの?」  かすれた声で、ミナミは呼びかけた。  ライトを徐々に上げていくと、そこには、小柄な女子生徒が立っていた。さっきトイレで見たポニーテールの少女とは違い、彼女は長い髪をおろしていた。 「大丈夫? 君もここに閉じ込められたの?」  話しかけたミナミは、そのことを後悔する。顔を上げた少女の顔には、目も鼻も口も点いていなかったからだ。  顔のない少女が、おぼつかない足取りで近づいてくる。 「私の顔、知らない?」  彼女はミナミの前に立ち、首を傾けた。その拍子に、糸がほどけた人形のように頭が転がり落ちる。 「やだ!」  とっさに、ミナミは少女の体を突き飛ばした。 「ねえ、あなたの顔をちょうだい?」  首から上がない少女は床を這いずり、ミナミの足首を掴んだ。その手を振り払い、ミナミは廊下を駆けだす。  振り向くと、大きな虫のようにカサカサと両手足を動かしながら、少女が追いかけてくる。  ミナミは廊下を走り抜け、階段を下りていく。校舎は暗く、混乱した頭では、どこを走っているのかさえも分からなくなってくる。 (とにかく、あの子のいる教室に行かないと)  頭では分かっているが、恐怖で足が止められない。階段を駆け下り、廊下を走りながら背後を見ると、首のない少女はいなくなっていた。
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