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「大人になっても、ネットで出回ったものって消えないんだよ? デジタルタトゥーって知ってる? 人の将来のことを心配する前に、自分の心配でもしたら?」
顔を背けたとたん、勝手に口が動いているようだった。次から次へとミナミから放たれる言葉に、鏡に映った穂香の顔から血の気が引いていく。
「そんなもの作って、頭悪そうだよ。ほら、自分で見てみたら?」
鏡文字を書いた画用紙を持った穂香を、ミナミは姿見の前に押し出した。
引きつった穂香の表情に、ミナミの胸が痛んだ。何をやっているのか、罪悪感を抱いた時だった。
放課後は鳴らないはずのチャイムの音が、聞こえてきた。
「こんな時間に、チャイムなんてなるっけ?」
ミナミは顔を上げて音のなるスピーカーに目を向けた。鳴り終わり、「ねえ」と、隣にいる穂香に声をかけるが、返事はない。
「穂香?」
彼女は消えていた。残っていたのは、彼女が書いた鏡文字の画用紙だけだった。
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