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 フリップには、穂香が書いていたような逆さ向きの文字が書かれていた。やはり穂香なのだろうか。赤いマジックで書かれた字はかすれているが、なんとか読める。 『助けて』  紙にはそう、書かれていた。 「ねぇ、穂香なんでしょ?」  ミナミが呼びかけると、彼女は消えてしまった。  穂香のことばかり考えていたせいで、白昼夢でも見たのだろう。自分に言い聞かせたミナミだが、リュックに入れていた画用紙の存在を思い出す。  あの日、穂香が消えたときに、彼女が持っていた鏡文字を書いた画用紙だ。 「バカバカしいけど」  ミナミはリュックから画用紙を出した。  あの日の穂香と同じように、鏡文字を鏡に映してみる。 (ほんとに、バカバカしいよね)  なにも起こらず、画用紙を下げたときだった。あの日のようにチャイムの音が鳴り響く。まさかと思いながら、慌ててミナミはもう一度、画用紙を姿見に映した。  鏡の中に、赤い布をかぶった人影が映る。逃げようとしたとき、鏡から出てきた赤い腕がミナミの両腕を掴んだ。
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