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 あたりは薄暗く、窓から入る月明かりが廊下を照らす。目の前には姿見があり、近くには鏡文字を書いた画用紙が落ちていた。 「ここは?」  ミナミは立ち上がり、姿見の前に立った。鏡はくもり、なにも映っていない。  あたりを見回す限り、見慣れた中学校のようだ。さっきまで、夕方だったというのに、あたりは薄暗い。  ここは本当に夜帳中学校なのだろうか。あたりをうろついていると、廊下の先から物音が聞こえてきた。  人の足音にしては、重みと硬さがある音だ。大きな金づちを床に打ち付けるような音が、廊下に響く。  廊下の角に赤い人影が見えた。その影は、鈍く光るなにかを持っている。赤い影が廊下を曲がる直前、背後の教室のドアが開く音がして誰かがミナミの腕を引っ張った。 「――静かに」  そう言って、口元に人差し指を当てたのは、見知らぬ少女だった。おかっぱの少女はミナミの腕を引き、教室の窓の下に腰を落とした。「あなたも座って」と、彼女に言われ、訳が分からないまま、ミナミは膝を曲げる。 「……やめろ、来るな!」  教室の外から聞こえてきたのは、同じ年頃の少年の声だ。続いて、喉が裂けたような叫び声が聞こえてきた。  断末魔だ。  自然とそう感じるほど、苦痛に染まった声だった。 「い、今のはーー」 「声を出さないで」  隣に座る少女は、ミナミの口を手のひらでふさいだ。  一体、外で何が起こっているのだろうか。視線を上げ、窓の外に目を向ける。窓の下に座っているせいで、廊下の天井や壁しか見えない。  廊下の壁には、赤い染みが点々とついていた。赤い染みを視線でたどっていくと、そこにいたのは、赤く揺れる影だった。 その影は、天井から吊り下がり、死神のような大きな鎌を持っている。  赤いなにかが、天井を床のように滑りながら廊下を通り抜けていく。天井から吊り下がる体は、頭から足先まで、赤い染みの付いたシーツのような白い布で覆われていた。顔は陰り、よく見えない。
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