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「なに、これ?」
廊下には、三つの布にくるまれた「なにか」が吊り下がっていた。なにかを包んだ白い布には、赤い染みがにじんでいる。染み込んだ赤い液体が白い布を伝い、床に滴り落ちていく。
まるでミノムシだ。ミナミは吊り下がったそれに、手を伸ばす。
「触らないで!」
布に触れる瞬間、ミナミの腕を時子がつかんだ。
その瞬間、吊り下がった三つのミノムシが舞台の仕掛けのように、ずるずると天井に引き上げられていった。そのまま、暗い天井に布にくるまれたそれは、飲み込まれていく。
硬い天井が、まるで固まっていないコンクリートになったみたいだ。
「あれって、どこに行ったの?」
「連れていかれたのよ。逆鬼に捕まったら、助からない」
彼女の言う逆鬼とは、さっきの化け物のことだろうか。一体ここはどこなのか、本当に元居た学校なのか。
「ありえない……」
ミナミは暗い廊下を見回した後、教室に戻ってカーテンを開いた。運動場を真ん丸な月と、星々が照らしている。こんなに月も星も、明るくいつも見えていなかったはずだ。
「町がなくなってる?」
違和感の正体は、暗闇に包まれた学校周辺の景色だった。学校周辺は住宅街だ。家々の灯りや街灯が光っていなければおかしい。
教室の時計を見ると、二時前だった。
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