過去

10/12
前へ
/245ページ
次へ
『しおり!!』 それに続いてわたしたちもしおりに駆け寄った。 しおりはコンクリートの上で目をつむり、地面は赤い血で染まっている。 見た瞬間わたしの体は凍りついてしまった。 しおりにそれ以上近づくことも、声をかけることもできずに呆然と立ち尽くす。 これがしおりだなんて信じられなかった。 ついさっきまで笑顔を浮かべていたしおりだなんて……。 それから救急車が到着して、しおりは運ばれていった。 わたしたちの親にも連絡が行き、それぞれに迎えが来た。 一緒に病院へ行くこともできない。 わたしたちは本当に無力だった。 だから、直人があのリアルチューバーの動画を見せてきたとき、わたしたしは全員しおりのことを思い出していた。 死者を呼び出すことのできる儀式。 呼び出したいのはしおりで間違いがなかった。
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加