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1.力を失った女魔術師は、お前なんか要らないと言われて、旅に出る
「そこまで————!勝負あり!」
宮廷内部のコロッセウム型、魔術演習場。
最も中心部の観覧席にいるバシレウス王が見守るなかで、審判の判定の声が空を劈くように駆け巡る。
瞬間、バシレウス王と横並びの椅子に座っていた王太子のフィンの表情が曇った。
まるでその場に落雷でもあったかのような、抉れた地面。
仕掛けられた巨大な赤の魔法陣。周辺には鋭い風が吹き荒れる。
抵抗虚しく、重力の効いた陣の中でついにリュミエールは膝を落としてしまう。
絶妙な角度で彼女を見下ろしながら、ノクターンは冷たい声を放った。
「あなたの負けです。師匠。
潔く師匠の座を降り、ロイヤル・ガーディアン・ウィザードの称号を返還して下さい。」
蔑むような眼差しはひどく痛く突き刺さる。
睨んでいるのは紛れもなくリュミエールの弟子の一人。
ノクターン。
濃い紫色の髪と、夜の月明かりのような、深い金色の瞳を持つ男。訳あってリュミエールの角膜の一部を移植されているからお揃いである。
その高圧的な存在に晒され、額から汗がこぼれ落ちる。
唇を噛みしめ、リュミエールはゆっくりと瞼を閉じた。魔女のような漆黒の髪がサラサラと下向きに流れた。
「……分かった。
素直に負けを認める。
そして私はお前たちの師匠の座も、ロイヤル・ガーディアン・ウィザードの座も降りよう。」
重力で押さえつけられ、抗えない体。
そんな相変わらず使えない体でリュミエールは、ノクターンと、残り3人の弟子の前でついに敗北宣言をした。
コロッセウムに招待された貴族達は嘲笑と侮蔑の表情を浮かべている。
今まさに人々の視線の中心にいる人物。
リュミエール・ロゼ。
偉大なる宮廷女魔術師。
王家の宮廷魔術師団の中で最高位に君臨し、ロイヤル・ガーディアン・ウィザードの称号を持つ。
持っていた。この瞬間までは。
リュミエールは平民の両親の元に生まれ、洗礼式で特別な魔力を持っていることが判明し、15歳でこのウスィク国の宮廷魔術師となった。
その後は様々な訓練を経て能力を生かし、実際に何度か訪れた国の災害をも救った。
だが、ある時を境にリュミエールは魔術師としての力をほとんど失ってしまった。

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