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リュミエールが力を失うと、ついにメイジは本格的に見下した態度を取り始めた。
見る見るうちにメイジの口元は醜く歪んでいく。
「なんで平民のあなたがフィン殿下のそばにいるのか……!
ずっと不満だったんですよ。
でも、もう関係ないですわね。
だって力を失ったあなたは、もう要らないと言われたんですものね。
この王家にも、4人の弟子にも。
フィン殿下にも……ね?」
「フィン……にも……?」
「うふふ。可哀想な元師匠に、教えてあげますね。
さっき王に進言したんです。
そしたら、この私がフィン殿下の新しい愛妾になってもいいと言われたんです。
つまりあなたの後釜です。
あなたはもう宮廷魔術師として必要ないだけでなく、フィン殿下の女としても必要ないと言われたんですよ。
ふふっ。それって最高ぉだと思いません?」
メイジの口元が笑い、伴って目が細まる。
それが事実かどうかが不明なため、リュミエールはただ沈黙する。
何より、年下の弟子に腹を立てるのは大人げないという、理性が働いた。
自分は師匠だから、ここは大人になるべきだと。
「疑ってます?
それなら確かめてみたらどうです?
今ならまだ王も殿下も、王の執務室にいるかもしれませんよ。
フィン殿下の本音をお聞きになったら?
きっともう要らないって言われるでしょうけど。」
「……メイジ。あなたは本当に変わらないわね。」
嫌味を吐くメイジに頭を下げると、足早にリュミエールは王の執務室を目指した。
あの場では気丈に振る舞ったものの、胸が痛いほどの不安が襲った。
『師匠………』
それにメイジだけでなく、他の貴族達にも噂されるようなことをしているのは事実だった。
実はあの事故の後も、魔力供給とは関係なしに求められて、リュミエールは何度かフィンに抱かれている。
そのことで、周囲に誤解されているのは十分に分かっていた。
しかもベッドの中では毎回のようにフィンはリュミエールに愛を囁き、結婚したいと言っていたのだ。
———だが冷静に、現実的に考えれば。
この国をいつかは背負って立つフィンが、魔力をほぼ無くし、利用価値のなくなった平民出身の女を一途に愛して選ぶはずがない。
そんな女を妃にするはずがないのだ。
素早く足を進めながらリュミエールは、自分自身の無意識の願望に、恥ずかしさを覚えた。
もう御伽話のように甘い愛を信じる、小さい子供ではないのに。
しかし妙な感情がリュミエールの中から消えなかったことは確かだ。
少し陽が落ちた王宮。城の中心部にあるバシレウス王の執務室。
外にいた兵達はリュミエールの顔を見るなり、簡単に警戒を解いた。
開いた扉から王とフィンの立ち並ぶ姿が見える。
見た目が非常に似た親子が、深刻そうな顔をして話をしていた。
「分かるだろう、フィン。
リュミエールは邪魔なんだ。
あの女はあの夜のことを利用して、お前の愛妾になった。
そのうち愛妾に飽き足らず、妃の座を要求してくるかもしれん。
だから、早めに排除するべきだったのだ。」

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