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レイは一旦ヴォルフさんに任せておくとして、セドリックさんからお使いの詳細(必要な治癒ポーションの数とか)を確認しようと再び視線を向ければ、先程までは無かったはずの白いウサギの耳が頭にぴょこんと出ていた。
「……それを見ると、父上殿がウサギ族だったんだなって思い出すよ」
俺の呟きが聞こえたらしいセドリックさんは、慌ててウサ耳を手で隠すように頭を押さえると、数回深呼吸を繰り返して普段通りの、獣人族ではなく人族にしか見えない姿に戻ってしまう。こんな感じなので、もふもふなウサ耳には、俺だけでなく他の人達も、なかなか触らせてもらえる機会がない。
「そんなに、獣人であるとバレたくないの?」
「……大人には色々とあるんだよ」
俺の問いに、困ったように笑って答えるセドリックさん。
他の国へは、まだ行ったことがないので獣人差別があるのかすらわからないけれど、少なくとも現在暮らしているフォレスティライト王国では多種多様な種族が共存しているし、獣人差別なんて無いんじゃないかなとは(俺の希望も込めて)思っているんだけど。
「コウキ、セドリックの美貌と、冒険者の憧れであるS級冒険者としての実力はな、男女問わず大人のお誘いを――」
「ヴォルフっ、幼児相手にそんな話をしないでくれるかな!?」
ヴォルフさんの言葉に対して被せ気味に真っ赤な顔でセドリックさんが叫んだ様子を見ていて、前世ではとっくに成人していた(チキュウでは若くして命を落としたが、前世で過ごした剣と魔法の世界では百歳超えの大往生で天寿を全うした)俺は、なんとなく察した。
例外はあるとはいえ、鳥獣族系の種族は人間族よりも成長が早い傾向にあるため、その手の知識は十歳の頃にはきちんと教育されるそうだ。
ちなみに成長が早いだけで、鳥獣族系の寿命は人間と同じくらいだと聞いている。
人間同様、魔力の高い者は老化が緩やかになり、成人後の十代後半から二十代前半くらいの若い見た目のまま長生きする傾向にあるそうだ。
「……ウサギは性欲が強いと言われているからな。獣人にまでそれが当てはまるわけでもないというのに……苦労したんだな、セドリック」
ボソッと妹のレイらしからぬ内容の呟きが聞こえて、普段は器の年齢に精神年齢が引っ張られてしまっているレイも俺と同じように前世の記憶持ちの転生者だったよなぁと改めて感じた。
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