世界樹ユグドラシルの精霊と天恵の神樹

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 苗木を植え終えたもふもふ姿の精霊達は、どうやら浄化魔法〝クリーン〟を発動して土汚れを落としている。  父上殿達も洗濯や掃除の時によく使用している魔法だよ。  特に隠れていたわけでもなかったので、精霊達も俺達の存在に気付いたようだ。 「アリエスさま、いえ、コウキさま――」 「若さまですと?」  羊に似たもふもふ達が俺を見つけて駆け寄って来たことに気付いた父上殿にゆっくりと地面に降ろしてもらい、飛べば早いのに『速度の出しすぎは危険だから』と俺達を気遣って二足歩行でとてとてと走るその姿まで前世の記憶にあるあの頃のままの懐かしい彼らをそっと抱き締める。 「若さまが転生した後、すぐにでもお傍に参りたかったのですが、この世界の世界樹ユグドラシルは弱っており――」 「若木の成長を待たねばならず、我等が降り立てるまで時間がかかってしまったのです」  俺を『若さま』と呼んでいる顔や手足が黒い白い毛の羊がノワール、全体的に白っぽい羊がブランだ。 「こちらが天恵の神樹でございます」  巨大なシマエナガみたいな見た目のグリは、レイを抱えたままのロードさんを植えたばかりの苗木のところへ案内している。 「エメラルディア帝国には、神殿が近くには無い草原地帯もありますゆえ、神樹の恩恵を受けやすいこの村にて苗木を育てるため、ロード殿には魔力供給にご協力いただいている……ということで帝天使様方が話をまとめてくださいました」 「なるほど。……あの悪夢のような出来事による影響も配慮していただいたようだな」
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