海が見える温泉

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海が見える温泉

 翠さんや精霊達から、神樹の苗木育成計画の説明を受けた後、村の畑や果樹園――と言っても、自給自足の家庭菜園レベルなんだけれど、散歩と見回りを兼ねてそれらの場所に案内した後は、一度ギルドに戻ってヴォルフさんにも声をかけてから、神樹の村の名物である温泉へとロードさん達と途中から合流した精霊達も一緒に案内した。  今日のところはギルドに来客は無かったようだけれど、父上殿達の冒険者仲間だったエルデさんとゼファーさんが近日中に村に来る予定だと伝書魔法で届いたみたいだよ。 「ほう、この村には温泉もあるのか」 「和国神威(カムイ)の龍王神エルド様と鬼王神龍様達も建築に携わってくださったものだ」  この世界では、お風呂は王候貴族や裕福な商家くらいにしかないもので、宿でも風呂付きとなると高級な部類に入るものだ。  一部例外が温泉地帯の村などだね。  そういう事情と、浄化魔法の〝クリーン〟があることもあって入浴という習慣が無かった元冒険者の父上殿達と共に暮らすようになった後、温泉大好き日本人としての前世の記憶も持っていた俺が、お風呂に入れないことに耐えられなくなって自重を忘れて作成したお風呂が元々のきっかけだった。  最初に作成したお風呂は、大きめの桶に魔法でお湯――炎で温めながら水を出したものを入れて、浄化の魔法をかけた簡単なものだったんだけど、俺達の様子を心配して見に来てくれていた和国の王である神龍様やアッシュ達が、『そんなにお風呂が好きなら……』と、自重せずに精霊王達に依頼してまで温泉を作ってくれたので、ありがたいことに、この神樹の村では毎日温泉に入ることが可能なんだ。  浴槽だけでなく石畳や石壁なども構築して、保温と自動浄化の術式まで組んでくれている。  和国の王である神龍様は、温泉関係だけでなく、海水を浄化して塩と真水を作成する術式も村にもたらしてくれた。
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