龍王神と風帝

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龍王神と風帝

「ふふっ、神龍殿からすると、世界各地のどこに行くのも大した距離ではないだろうが、我ら人間からすれば、この村から和国まででも数日はかかる距離だぞ」  ロードさんがエルドさんに話しかけているこの様子からすると、それなりに気安い間柄なのだろうな。 「人間は食事や睡眠が必須となりますからねぇ」 「魔力さえ続けば活動可能な我々とは異なりますゆえ」  ブランとノワールは、セイさんとアルさんの間に座ることで落ち着いたようだ。  グリは父上殿やロードさん達がいるあたりで水鳥のようにぷかぷかと浮かんでいる。  神龍達からすると和国から他の国々までは日帰りできる距離だけれど、ドラゴンと契約している龍騎士さんなどに頼んで運んでもらったとしても、一番近いと言われているこの村からでも海岸から和国まで半日くらいはかかる距離で、船だと数日かかる距離だと父上殿達から教わった。 「自分は龍騎士ですが、和国周辺の上空には乱気流が発生しやすく飛行しづらいという話を聞いたことがあります」 「一定の標高を超えると、高度が上昇するほど気温が下がりますので、飛行時には結界魔法を併用することが多いですし、一定の距離を移動するごとに休憩を取るのが一般的なのですよ」  『自分は龍騎士です』というセイクリッドさんと、『一応賢者なのですよ』というアルヴィスさんが、入浴中の雑談でそんなことまで教えてくれた。  この世界では、〝魔術師〟であり、かつ基本属性の五つ(土、風、炎、水、雷)全てで上級魔法が発動可能、〝治癒士〟であり、かつ複数人一度に治癒が可能、〝薬師〟(薬剤師であり医師でもある。薬草知識、ポーション知識、薬の調合、病状鑑定などの知識と技術を持つ者で、人柄判定試験で神殿にも問題なく入ることが可能だった者)であるという全ての条件を満たした人が〝賢者〟と呼ばれている。  だからアルさんは、ロードさんの護衛というだけでなく主治医的なものも兼ねているみたい。
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