賢者の教え

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 その様子を見守り、俺達と共にロードさん達を見送った翠さんは、去り際に俺とレイへと順に視線を向け――。 「キミ達の魔法の発動しやすさは、前世での経験や加護もあるけれど、血筋にも由来するもの」 「血筋?」 「俺達としても意図したわけではなかったけれど、S級冒険者として活動していたキミ達の父親達でさえ知らない混ざり合ったその血筋はね、神に連なるものなんだ」  翠さんから放たれた予想外の発言に、父上殿やヴォルフさんも驚いているようで息を呑んでいる。 「その秘密を知りたければ、冒険者になったら聖国の大神殿に行くといい。一つだけ教えておくならば、ドワーフ王の息子であるエルデの片親は、和国神威の国王エルドだよ」 「……え?」  エルドさんって、さっきまで温泉で雑談を交わしていた、あのエルドさん?  俺の転生者仲間ってだけじゃなかったの!? 「干渉値を超えるとチキュウのに告げられ、息子エルデに親だと名乗ることを許されず、それでもせめて息子や孫に会いたくて頻繁に村へと来ているのに、チキュウのとの約束を律儀に守って名乗らずに帰るんだから」  翠さんは、『エルドの件は、俺からラビットに許可をもらっておいた。それ以外は、二人が冒険者として認められる年齢になって自衛できるまではダメだとチキュウのがうるさいからね』と続け、慈愛に満ちた優しい瞳で俺達へと順に視線を向けて、祭壇の前で俺達に背を向けた。 「あと七年くらいかな。コウキとレイ、二人が揃って冒険者となり大神殿に訪れる頃には、天恵の神樹も、世界樹ユグドラシルの若木も育って、今よりも力を増しているはずだから」
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