『いただきます』に込められた祈り

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『いただきます』に込められた祈り

 お湯が沸いたため、ヴォルフさんがお茶を淹れてくれる。  今日はドライフルーツなどを利用したフルーツティー。  ドライフルーツ作りは、俺とレイもお手伝いさせてもらったんだけど、その時になぜか料理スキルだけでなく、調合スキルも上昇していたっけ。  複数の果物を扱っていたからなのか……ヴォルフさんや父上殿も何が作用したのかわからずに首をかしげていたな。  ついでに補足するなら、この世界では、お茶を淹れても調合スキルが上昇することがある。  ハーブティーならまだわかるんだけど、緑茶でも上昇することは確認済み。  お茶そのものが薬湯扱いにでもなっているんだろうか?  調合スキルも謎が多い。 「「「「「「いただきます」」」」」」  食事の前には、両手を合わせて感謝を伝える。  俺達の命を繋ぐ糧となってくれた食材に感謝を。  生命を育む環境と、それに携わる全ての者――世界を見守ってくれている神や眷属達への感謝を。  料理をつくってくれた者への感謝を。  そして、食材が料理となるまでに関わった全ての人達――農家さん、漁師さん、猟師さん、作物を育ててくれた人、収穫してくれた人、運搬してくれた人……冒険者や商人、それに治安を維持してくださっている多くの人々にも感謝を。  当たり前のようでいて、当たり前ではない平穏。  治安が悪ければ流通は滞る。  自然災害や、魔物や猛獣による被害があってもそれは同じ。  だから、平穏な日常が続いていることにも感謝を込めて。  世界を愛せなくなった神は邪神に堕ちる。  そうなってほしくなどないから、この世界が大好きなのだと日々の感謝を食事の前の『いただきます』の言葉に込めるのだと父上殿達に教わった。
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